The King with Donkey Ears

ドラマ視聴素人の感想置き場。自分のために書いてます。

めっちゃ早口で言う『愛していると言ってくれ』の感想

先日から地上波で『愛していると言ってくれ』の再放送が始まった。
毎週日曜日に14時から3話ずつ、
4週に渡って全12話ノーカットで
放送されるという。

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私は常日頃から90年代のドラマこそ
至高だと主張してきたので(思い出補正であることは重々承知している)、その中でも名作ラブストーリーとして語り継がれている今作を見ないという選択肢はなかった。


その結果、こうやってブログをわざわざ更新しているのだから何となく察してもらえると思うが、
すっかり『愛していると言ってくれ』にハマってしまった。

つか、ボロッボロに泣いてしまったのよ。

とりあえず初回ぐらいは見てみっかー、と気軽な気持ちで見始めてしまったのが運の尽きで、
私はすっかりこの作品の虜になってしまったのである。もう既に全話見た。何なら3周した。そのたびに泣きましたよあたしゃ。


Twitterでボソボソ呟くだけでは
どうにもこうにもこの気持ちは
発散できそうもないので、何がそんなに惹きつけるのか、そのことについて本気出して考えてみた。
そしてまとめた。まとめました。

めっちゃ早口で言います。
なおネタバレは壮大にぶっ放しているので、
既に全話見終わった人向けです。





ドラマ『愛していると言ってくれ』のここが素晴らしい!

1.豊川悦司さんと常盤貴子さんがとにかく素晴らしい

まずこのドラマの見どころは、
なんと言っても豊川悦司さんと常盤貴子さんの
役が憑依したとしか思えない
神がかった熱演です。
すごいです。すごいんです。語彙力。


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豊川悦司さん。耳が聞こえない(後天性障害)画家の青年・榊晃次役です。
もうね、彼に関しては、
恋に落ちねえ奴ぁいねえだろってぐらいかっこいいのです。
かっこよすぎです。引きます。
美しい顔、高い身長、長い指、長い手足。
完璧超人ですか?

とにかく全ての姿が画になります。
あんな自然素材のシンプルな服を着て、サンダルを履いてもかっこいいのは彼だけです。反則。

もう、美しさとして絶頂期ではないのかと思えるぐらいで、そんな彼の姿をこうやって最上の形で映像に残してくれてありがとう。と土下座したくなる気分です。

それでいて表情ですよね。
耳が聞こえない≒喋ることができない ので
その分晃次の人間像を表情や仕草で表現しなければいけないのですが、
これがもう、すげーなあんた!!と感嘆しかない熱演なのです。

傷ついたときの表情、怒っているときの手話の荒さ、嬉しいときのほころんだ顔、
何より紘子といるときの慈愛に満ちた表情!
本当に紘子のことが愛おしくて愛おしくて
仕方ないんだろうなって
見ててバシバシ伝わってくるんですよね。

このドラマは紘子の恋物語でもあるけど
晃次の恋物語でもあって、
何なら愛情の深さは晃次>紘子だと思っているんです。(粘度は断然紘子だけど)
そもそも、出会ったときから紘子に恋してたでしょアンタ、と2周目にはそう思うようになりました。

紘子は子供なので、晃次に対してひどいこともガンガン言ってくるのですが、腫れ物扱いされてきた晃次にとっては、
パーソナルな部分も知りたい・分かりたいと全力な紘子の性質があたたかく感じたのかもしれませんね。

私の大好きなドラマ『高校教師』(1993年)に
こういう台詞があるんですが、

いつも思ってたことがあるの
人が周りにいないからじゃなくて、
自分をわかってくれる人がいないから、
寂しくなるんだね

晃次もまた、分かってくれる人、分かろうとしてくれる人を無意識のうちに欲していたのかも、
だから紘子に対して
あそこまでの愛情を傾けられるんでしょう。


子供の頃から傷つけられてきた故、他人を傷つけるようなことはしない優しさがあって、
その反面、傷ついたときの痛みを知っているから、激しい感情をなかなか相手にぶつけられず
自分から折れてしまう。

そういう晃次の内面を、
トヨエツさんは完全にモノにしていて、
脚本や演出の妙もありますけど、
きっと女性だけでなく男性視聴者も
晃次に恋してたと思いますよ、見てて。

何か、もう、本当にありがとう。
お礼しか言えないっす。

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常盤貴子さん。女優の卵・水野紘子役です。
かわいい。
かわいすぎます。
見ていて何回「かわいいな…」と思ったことでしょう。
晃次に対して「かっけー…クソーーッ!!殺してくれ!いっそひと思いに殺してくれ!!」
と何回も思いましたが、
紘子に対しても「なんつー表情するんだよ…反則やろ…ずりーな!」と何度も感じました。


常盤ちゃんはもちろん見た目もスタイルも
「完璧超人かよ」ってぐらい
画になる方なのですが、
何より表情!
そして真っ直ぐな眼差しが秀逸なんですね。


裏表もあざとさもない
ひたむきな瞳というか(だから余計にタチ悪いんだが)、それがまた、紘子という役にガッチリハマっていたと思います。



初回のラストシーン、
「もう一度、逢いたかった」と
手話で伝えた後に
じっと晃次を見つめるんですけど、

そりゃあさぁ、こんなかわいい子が
ずっと自分のこと探してたっつって、
自分のために手話も覚えて、
反対側のホームまで息を切らせて
走ってきたらさあ、
実の父や義理の母からも距離取られてきた晃次にはぶっ刺さりますよ。
そりゃー恋に落ちるってもんです。

この説得力ね!

常盤ちゃん特有の、あの真っ直ぐな眼差しと
表情ありきだと思いますよ。


そして、このドラマは
後半から紘子が疑心暗鬼に陥ってしまって、
そこが見ていて辛いんですが(7話で最終回にしたい気分は今でもある)、でも実はその部分が大切なんじゃないかなとも思います。

恋愛って綺麗なことだけじゃなくて、
醜い部分もあるじゃないですか。

このドラマに関しては醜い部分は
ほぼ紘子が請け負ってますけど(笑)

両思いなのにすれ違って、
別れを選んでしまうのが
見ていてすごく悲しくて切なくて、
でもあるあるだよなーとも感じました。

この紘子っていう役は
とても難しい役なんですよね。
完全に嫌われかねない。

というか、嫌いとまではいかなくとも
「紘子何してんだよー!」
「紘子、晃次さんのこと信じろよ!」
「紘子勝手だなオイ!」
と8話以降何度思ったか。

晃次が優しい大人なので、
より自分本位と身勝手さが際立つんですよね。
2話で本人も似たようなこと言ってたけど。

思うに、紘子は幸せな家庭で
友達にも囲まれて愛情いっぱいに
育てられてきたんでしょう。

だからあんなに素直で正直で、
反面深く傷つけられた経験や
孤独を味わった経験がないから
どんなことが相手を傷つけるのか、
圧倒的に経験値が足りない。
自分のことしか見えてない。

健ちゃんに助けられるのが
当たり前になっているから、
健ちゃんと何度も二人で会う。

紘子は、晃次が光と会っていたことを
責めていたけど、傍から見たら
健ちゃんに頼りきりのお前も大概やぞ、と感じるわけで。
晃次と健ちゃんが聖人レベルの優しさだから
大事になってないだけや。

いや、その機微の鈍感さと内面の未熟さが原因で
晃次と別れることになったんだけど。
…なんか紘子の悪口大会になってきたな。

とにかく!紘子って役は難しい!

常盤ちゃんの嫌みない少女性ありきで
ヒロインとして成立していたと思ってて、
特に後半部分は、オイオイと頭を抱える展開も、
常盤ちゃんの表情とまっすぐさで
なんとか保たれてたと感じています。

ひたすら走ってひたすら笑ってひたすら泣いて、
かなりエネルギーを使う役ですよこれ。
でも、常盤ちゃんだから成立した、
そう思いました。

こんな美しい二人を、あの時あの瞬間に
映像に残してくれてありがとうTBS……。
文化遺産です。

2.脇を固める演者も素晴らしい!

主役二人の素晴らしさはもちろんだけど、
このドラマは脇も良い。
無駄なキャラクターが一人もいない。

紘子の幼馴染で、いつも影から
紘子を支える健ちゃん、
岡田浩暉さんが演じてます。

私は心の中でトゥビコンさんと呼んでるのですが、まーーーとにかく健ちゃんはいいやつ。
紘子に想いを寄せながらも、晃次のことも思いやって、晃次の妹の栞の面倒まで見ちゃう兄貴分。

なんなの聖人なの?

北川悦吏子脚本では見守りポジションってのがあって、『あすなろ白書』の取手くんであったり
君といた夏』の壱成くんであったり、『最後の恋』の袴田っちであったり、
そういうポジションは大抵報われないのですが、
そのなかでも今作の健ちゃんはかなり報われないです。でもいいやつ。

晃次が書いた紘子宛の手紙を紘子に渡さなかったことを深くわびるシーンがあるんですけど、
そんぐらいぜーーんぜん許容範囲!
だって紘子の方が
自分のことしか考えてなくてひでーもん!

トゥビコンさんはミュージシャン出なんですけど、演技がまるで違和感なくて、
優しい健ちゃん役がぴったりでした。
ミュージシャンって意外に演技いけるのかな?
『奇跡の人』の山崎まさよし氏や
『Friends』のエレカシ宮本氏も上手かったし。


お兄ちゃん大好きな義理の妹・栞。
矢田亜希子さんのデビュー作です。
デビュー作がこの作品&この役って、ハードル高すぎんか。

だって、結構なメインどころですよこれ。
しかも手話しながら台詞を発さなければならない、これをデビュー作で求められるって
相当きつかったのではないんかなー。

初めて見たときは
「ムカつく妹だなー」との感想だったんですけど、じっくり見てみたら、何かかわいらしくて健気に思えてきたのですよ。

お兄ちゃん大好きすぎていろんな暴走をする、でも反省や後悔もちゃんとする、悪い子じゃねえよなぁって。
16歳なんて子供中の子供。
思春期の少女の反抗って感じで、
嫌いじゃないですね。

演技自体は初々しさ満載で、
発声トレーニングとかしたことないんだろうなーとほほえましく見てたんですけど、
その初々しさや荒さが栞役にぴったりだったなあ。


その他にも
晃次の元婚約者光役の麻生祐未さん
(ムカつく女でしたよね!それを麻生さんがまた上手過ぎるぐらい上手く演じてて、イラッとしたわーっ!)も
晃次を捨てた実母役の吉行和子さん
(母と再会する7話、まー泣けた泣けた!
新幹線の窓越しに会話を交わすシーン、
豊川さんも吉行さんも演技すごくて、
見てるこっちも涙だだ漏れよ!)も、
余貴美子さんや橋爪功さんや鈴木蘭々さんや
憎まれ役の相島一之も素晴らしいし、
どーするよこれ、って感じでした。完璧。

3.脚本と演出と主題歌が素晴らしい!

いくら演者さんたちが最高でも、ストーリーが良くなければ役者の良さを消してしまいます。
(豪華キャスト揃えてクソつまんねードラマってのは何度も見てきた…)
そういった意味では、このドラマはキャラクター設定やストーリーも良かったと思います。


北川悦吏子脚本だと、いわゆる
第一印象最悪からのケンカップル設定が
多いようにお見受けしますが
(『ロングバケーション』『最後の恋』『Over Time』『ビューティフルライフ』『Love Story』とか)
今作は紘子も晃次もお互いへの第一印象が良いんですよね。何なら、晃次の方はほぼ一目惚れだとしか思えない神対応。異質かもしれません。
展開が速くて良いです。


また、あえての展開のリピートが、
今作はかなり効いてて秀逸だったなあ。
主に初回と最終回、その対比ね。

具体的に例を言えば、
二人の出会いのシーンと、3年後の再会シーン。
紘子がリンゴを取ろうとして取れなくて、
それを晃次が取ってあげるシーン。
(豊川悦司常盤貴子が来るってんならそらリンゴも栽培するよ!どうぞ盗めむしろ盗めですよ!)


そのときの紘子と晃次の表情よ。

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これは演じている豊川悦司さんと常盤貴子さんも無論素晴らしいんですけど。
初めての出会いのときは少し戸惑いと気恥ずかしさがある表情なんですが、
3年後の再会シーンは、
まるでまた逢えるのが分かっていたかのような表情で、二人とも成長したような、
もう、とにかく良かったんですよね!

また、反対側のホームに
探していた相手がいたときの対応もそうですよね。
紘子は鍵を投げて(!!)晃次に気づいてもらう。
それに対して晃次は、
聴覚を失って以降怖くて
ずっと出してこなかった『声』を使って、
電車に乗り込もうとする紘子を
引き止めるんですよね。


私ゃ泣きましたよ。
ずっと晃次の声が聞きたい、
愛してると声に出して言ってほしいと
願っていた紘子(元カノの光が「私はあの人の声が一番好き」とかなんとか惑わせるようなこと言いやがるから)
を呼び止めるために、
ずっと出してこなかった声を使う。


くーーっ!

ニクイねこの展開。たまらんね。


そして、あの海辺での名シーンですよ。
テレビでのドラマ名場面特集で
何度となく流れるあれです。

これまで、紘子が激しく
自分への愛情を確かめるようなことはあっても、
晃次から紘子に頼むようなことは
ほとんどなかった。

それは、晃次の穏やかで優しい、
控えめな性格ゆえだと思うのですが
そんな晃次が、最後に一つだけ頼みがある、
と言って
「君の声が聞きたい。(中略)
ア・イ・シ・テ・イ・ル・と言ってくれ」

と紘子に告げるんです。ウウッ。
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私ゃ泣きましたよ。
まずあのシーンのあまりの美しさと
儚さに泣きましたよ。



そして晃次の表情に撃ち抜かれましたよ。
汚れひとつないまっさらな、
ただ慈愛に満ちている、
もう何だろう、神かなんかかと思った。

トヨエツ氏、この頃は人間じゃない。間違いない。確信した。見ればわかる。


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そして、泣きながら愛してる愛してると言う
紘子にもうるうるした。

常盤ちゃんがまた、迫真なんだわ。
演技とは思えないぐらい迫真なんだわ。

だから自然に涙出た。
その後の出すあてのない晃次への手紙に書かれた

この先、何が起きても、どれだけ時が流れても、私の心のベストテン第1位は、1995年の夏にあなたと出会ったことです

の一文にもうるうるして、
私ゃ感動で胸が震えたね。本当に震えるんすよ。

その他にもキツネの伏線や、
花火やオルゴールの小物の使い方も
非常に良かったです。
(後半紘子を情緒不安定のメンドクサ女にしすぎだぞ!常盤ちゃんだからかわいいけど!とか、
健ちゃんどんだけ便利屋だよ!とか
文句言いたいこともたくさんあるけど、
それを補ってあまりある作品だから
目をつぶります!)


演出も良いよなぁ。
余計な音楽が無くて、海の音や二人の手話の音が
それだけ引き立つんですよね。
とにかく映像が綺麗で美しくて、
シンプルで、静寂や自然の音もまた劇中音楽になり得るんだとこの作品を見て思いました。

私が見ていておおっ!となったのは、
やっぱり初回のラストかな。


人混みがいなくなって、晃次が反対側のホームでずっと待っていてくれてたのがわかるあの瞬間。
「オオッ」と声出ましたからね。

鳥肌ですよ鳥肌。
足長ッッッ!!
とも思いましたけど。

いやあ、あれは良いシーンだったなー。
あそこだけでももう何十回見たなー。

4話の海辺での花火シーンも良かった。
ずっと紘子への深い愛情を
まっすぐな眼差しで表現してる晃次も、
ずっと楽しそうな紘子も。
なんて美しいんだろう、
もうここで最終回でいいです!!
と私ゃ思いましたね。

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TBSは赤い傘が好きだなオイ!!


とにかく紘子と晃次のシーンは
喧嘩シーン含め全部良かった!
その分切なくもなったけど。

そして何と言っても主題歌!これは外せない。
いいところでドリカムさんの『LOVELOVELOVE』が流れてきて、
それを聞くたびにパブロフの犬のごとく反応し
ウルウル&胸がギュッとなります。
ドリカムさんは連ドラとの親和性が非常に高いアーティストですが、
(『ひらり』の「晴れたらいいね」とか、
救命病棟24時』の「朝がまた来る」とか、
砂の器』の「やさしいキスをして」とか)

そのなかでも
愛していると言ってくれ』×「LOVELOVELOVE」が一番だなー。
多少の無理な展開やクサイ展開でも説得力をもたせる、納得させるようなパワーがある!

この主題歌でなかったら、
この作品はきっと別のものになっていたでしょう、それぐらいハマっていました。



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役者×脚本×演出×主題歌&音楽
全てがガッチリハマったドラマは
名作、とか秀作、とかを飛び越して、
「奇跡のドラマ」と個人的に私は呼んでいて、

愛していると言ってくれ』は、
間違いなく奇跡のドラマだったと思います。

ありがとうTBS!