The King with Donkey Ears

ドラマ視聴素人の感想置き場。自分のために書いてます。

高校教師 第4話


何度見ても4話は良いですね。


残酷な場面と、心温まる場面と、
さまざまな要素を詰め込んでも
全く違和感なく自然にストーリーを展開させられるのだから、本当に素晴らしいと思います。


羽村先生は、本気で怒ったことも
何かに反発したことも無い、
穏やかな人生を歩んできたんでしょうね。



繭に想いを寄せている佐伯先輩から逆恨みされ、冤罪をかけられ女生徒たちから白い目で見られるようになっても、
酔っ払って新庄先生に愚痴をこぼすぐらい。


本人も言っていましたが、
期待の息子で、ずっと逆らわずやってきた…
レールからはみだせない人生だった
、と。


自嘲しながらそんなことを語る羽村先生に、
新庄先生が「優しいんや」
と返すところが、
胸にグッと来たなぁ。

そのとおり、羽村先生は
とても優しい人なんですよね。


佐伯先輩が塩酸事件を起こしたときも、
事の顛末を話せば自分へのあらぬ疑いは晴れるのに、彼女の犯行や動機を表沙汰にしなかった。


あまりにも打算的な面を見せてきた婚約者との婚約を解消すると決めたときも、
教授に本当の事は言わなかった。


波風を立てたくない、
誰かを傷つけたくない。
誰かを傷つけるぐらいなら、
自分が我慢すればいいんだ、みたいな
穏やかで優しすぎる人間性


4話の序盤で、黙々と結婚式の招待状の準備をする羽村先生は見ていて辛かったね。


黙殺して、穏やかに結婚生活をしようとしていたのに、何を勘違いしたのか
婚約者から子供は一人だけ生む、それ以外ではセックスはしないだとか、
貴方とのセックスで感じたことがないだとか、
あまりにも、羽村先生には受けとめきれない、
冷酷で打算的な婚約者の言動。

それを聞かされた羽村先生が、
必死で平静を装おうとする姿が哀しかった。


そりゃあ、純粋に自分を慕ってくれる繭に
心が傾くのは致し方ないことです。


塩酸事件の後の歩道橋での二人のやり取り。
見ているこちらですらホッとして、
心が休まる思いだったのですから、
当人の羽村先生はもっとでしょう。


帰っていく繭を目で追って、
身を乗り出して下の繭を見送っている
羽村先生の姿は、もう完全に恋をしている人間のそれです。


真田さん、上手いよなぁ、本当に…。


羽村先生と繭、二人を取り巻く環境は
とても痛ましい、チクチクと不安が心に刺さるようなことが多いのだけど、
だからこそ、二人は寂しさと孤独をお互いで埋め合えるのかなと思います。



婚約者の打算的な姿を見たあと、
駅のホームの向かい側同士での二人のやり取りも良かった。

はぁ〜と手を息で温める羽村先生を真似る繭。

「真似すんなよ」と言われて
「真似すんなよ」と返す繭。


何気ないやり取りが、もう既に
羽村先生にとってはかけがえのないもので。


動物園に行こうか
、なんて誘うのも、
本来は教師が女生徒にしちゃあいけないんです、しちゃいけないことは分かるんですけど、
でも、しちゃうよなあ…と
見ていて理解できちゃうんですよ、
羽村先生のこの行動が。


それぐらい彼は人知れず傷ついていて、
でも傷ついていると周りに言えないし
自分も認識したくない。
ただ、繭といたら心が休まる、ホッとする。
そして自然でいられる。

それが、自然と視聴者にも分かるようにできてるのがこのドラマの素晴らしいところ。
説明臭くないのに分かりやすい。



電車の窓を開けて「行く!」と返事した繭の笑顔に羽村先生もとても嬉しそうで、
ああ…繭がいて良かったね…と、
どうしても見ているこっちは思ってしまうんだな。



そして、婚約解消を
父親であり研究室の教授に告げた後、
もう研究室には戻れないことと、
自身の研究論文が最初から目的であったことを悟り、初めて羽村先生が激昂した場面も見ていて胸に刺さった。


ああ、怒り慣れてないんだな、
って分かる動きで。


自分の頭を何度もぶつけるし、
顔も何度も机に押し付けられるし、
羽村先生があまりにも気の毒で気の毒で
見ていてたまらなかったです。


全てを失って、失意に暮れながら
家に帰った彼を待っていたのが、繭で、
そんな彼女を見たときの羽村先生の表情が、
哀しみや悔しさややるせなさや絶望で
深く傷ついた彼の心が、ふっと楽になったような、そんな表情でした。


真田さん、本当に本当にすごい。すごい。


『ぼくたちの失敗』のBGMバックに、
羽村先生と繭が動物園デートを楽しむ姿は、
ずっとこういうシーンだけ見ていたいな…って思ったし、無邪気に笑顔を交わす二人が本当に可愛らしくて純粋で、本当に心洗われましたね。


そして、このドラマでも
上位を争うであろう名シーン。

羽村先生が繭の前で
初めて慟哭を見せるシーン。


愛は意味を持たない概念に過ぎないか…。
普遍的な愛なんてものは、
進化の過程においては、
何の意味も持たないと言われているんだよ。
生物学者は、ある意味で皆そう思っている。
たとえば母性という母親が持つ愛情も、
雄の精子よりもたくさんの栄養を持つ卵子を提供している雌が、その見返りを求めて、子どもに執着しているとも考えられる…。
全ての遺伝子が、利己的であるという説が正しければ、生き物は、みな本質的に孤独なんだ。
こうして集う水鳥たちも、
人間だって、一人ぼっちなんだ…。
生まれてくる時も、死ぬ時も…。
僕は…何もかも失ってしまった…
ささやかな未来も…。



3話で、直が新庄先生の無骨な優しさに触れてやっと涙を流せたように、
羽村先生も、繭の前でやっと自分が我慢していた辛さを吐露して泣くことができた。

そして、繭はそんな羽村先生の心の痛みを
まるで自分の事のように悲しんでくれて、
そして一緒に泣いてくれたのです。


ここで流れるのが、いつもの『ぼくたちの失敗』じゃなくて、『男のくせに泣いてくれた』っていうのも良いんです。




youtu.be

『男のくせに泣いてくれた』
は『高校教師』のもう一つの主題歌だと思っています。

その切ない旋律が羽村先生と繭の許されない純愛の切なさと、二人の心の孤独を感じさせていて、
個人的には、『ぼくたちの失敗』と同じぐらい好きな歌。



羽村先生のモノローグも良いですよね、


あの時君は、いつまでもそばにいて
一緒に泣いてくれたんだね
こんなちっぽけで弱虫な、僕のために…



ここから、タイトルバックに入るのも完璧。

4話はあらゆる意味で完璧すぎて、
何回も何回も見ちゃうなぁ。


本当に、羽村先生に繭がいて良かった。
 

羽村先生は繭に人生を狂わされたとか、
彼女と出会わなければ、とか
何度も見るうちに、そんなことも考えるんだけど、でも、長く生きる=幸せじゃない。


本当の幸せだとか愛だとか、
そんなことを考えさせられるドラマなんですよね。



直と新庄先生の絆も好きだなあ。

藤村先生に脅されて肉体関係を強要された直が
剣道部に入ってあげてもいいよ、と新庄先生に近づいたのは、助けてくれそうだから、というのもあるだろうけど、
新庄先生の優しさが何より彼女の救いだったからですよね。


新庄家での羽村先生・繭・新庄先生・直・貴広のお鍋のシーンは、本当に好き。

軽口を叩いているように見えて、
直は深く傷ついていて、それを新庄先生も分かっていて思いやっている。
だからこそ、楽しそうに新庄先生に接する直は、良かったね、と思うし、
その健気さに、見ていて同時に苦しくなります。


何で泣いとったんや、と聞かれても、言えない。
ラーメン美味しかったよ、と
笑顔で返す直に、見ているこちらも涙しました。

持田真樹さんは、台詞回しは拙いんですが
たまにハッとする表情をするんですよね。


誰にも言えない秘密を独りで抱えながら、
繭や新庄先生たちの前では平気ぶっている。


羽村先生も、繭も、新庄先生も、貴広も、
辛いことや不安なことを我慢して、
周りに優しさや明るさを見せている。


だからこの5人が好きなんだろうな、自分。



次は5話。ついに5話。
5話で最終回で、いいんじゃないかなあ…。