The King with Donkey Ears

ドラマ視聴素人の感想置き場。自分のために書いてます。

高校教師 第5話

君は覚えているかい
あの頃から僕たちは、徐々に自分の存在を、
互いの心の中に見ることができたんだね
誰かに見られたら壊れてしまう
そんな危うく消えてしまいそうな君が、
僕の中にいた…





もう5話で最終回にしてもいいんじゃないでしょうか。
と言いたくなるぐらい完成度の高い回。

いやぁ、脚本も演出も音楽も映像も
役者さんたちの演技も、全て良かったなぁ。




お互いがお互いのことを気にかけて、
目で追っている。

冒頭の羽村先生のモノローグを聞いても分かりますが、お互いの存在がお互いの中にいる。

そんな二人の恋というのか愛というのか
形容しがたい関係が、とにかく美しいんてす。




5話のラストで、ついに二人は一線を越えてしまうのですが(またこのときの演出や役者さんの演技が絶妙で素晴らしいのですが)

私はその前、繭を突き放して駅に行くも
置いてはいけずに、電車に乗らない羽村先生とか、
駅の入り口に座り込む繭を見つけたときの
羽村先生の表情や行動が、
ものすごく印象的だなと感じました。

びしょ濡れの繭に自分のコートを
かけてあげるのですが、
そのときの羽村先生の、
理性と戦っているような表情や描写が、
とても良かったです。




5話は、じわじわと芽生えていた繭への愛情を、
羽村先生が強く自覚した回だと思います。


もう生物準備室で繭が
昼ご飯を一緒に食べていても咎めない、
映画見に行こうと言っても拒みきれない、
1500m走で1等取ったら、と頑張る繭の姿を見てついグラウンドにまで出てくる、
自分とのデートの実現の為に頑張る繭の姿を目で追いかける…。


もうこの時点で、視聴者は
羽村先生が繭に特別な感情を抱いていることは見ていて分かるのです。明白なのです。

しかし羽村先生は気づかないのか、
それとも気づかないようにしているのかは分かりませんが、

「『教師』としての自分」
「『大人』としての自分」

がどこか隅に残っていて、
繭に完全に心を許しきれてないし、
繭への恋愛感情に気づききれていない印象。


鎌倉の海でのデートも、
とても楽しそうに過ごしているのに、
一方で時計を見て時間を確認している。
それに気づく繭の哀しそうな顔が、
また見ていて切なくなりました。


繭に「時計ばっかり見てるんだもん!」と腕時計を投げられたときも、
「一緒にいたいの、先生と一緒にいたいの」と言われたときも、
繭の愛情表現は、危うくてまっすぐで、
これも不安定な未成年の少女故でしょうか。
羽村先生は拒絶しきれないけど
受けとめきれない。


決められたレールの上をずっと歩いてきた、
はみ出した人生を歩む勇気がなかった。

そんな羽村先生が、
前述した駅の入口の場面で、
びしょ濡れになって座り込む繭を見つけたとき、さらに詳しく言えば、壊れた羽村先生の腕時計を見せられたときの(あんな暗がりの中ずっと探してたんですね)表情、

ちょうどあのとき、
繭への恋愛感情を強く自覚して、
「離れたくない」という欲求も芽生えたんじゃないかなと思いました。


その気になれば、タクシーででも帰れたと思うのです。でも羽村先生はそうしなかった。

これは、羽村先生自身が繭と一晩共にいることを選んだのだと思います。



それでも、最後の一線だけは
踏みとどまろうとしていましたが、
繭の見る夢の話を聞いて、いよいよ溢れ出して来た愛情に抗いきれなくなり、


この前、言ったでしょ
人間は3つの顔があるって


他人が知ってる自分


自分が知ってる自分



ほんとのあたしを知っても、
嫌いにならないでね…



で決壊し、一線を越えてしまった。


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ここで流れる森田童子氏の『G線上にひとり』もすごく良かったし、
壊れた腕時計の針が再び動き出す演出も出色。

一線を越えたと言っても、
直接的な描写とかシーンは無くて、
羽村先生のコートが繭のコートに被さる形で落ちたりすることで
それを描写しているのが、
美しくて品があって大変よろしいですね。



その直後に、繭の父親が学校に来て、
羽村先生の靴箱を確認した後に職員室に向かうのは、
いよいよ波乱の予感、
これから起きるであろう出来事を想像すると、胸騒ぎしか起きませんでした。

そんななか、鎌倉駅のホームで
無邪気に大仏のキーホルダーを見せあっている羽村先生と繭の姿は、涙が出てくるほど純粋で幸福に満ち溢れていて、


もう、5話が最終回でいいんじゃない?
ハッピーエンドで終われない?

と何回も何回も思います。
5話を見るたびにそう思うのです。




お互いあくびをしている
羽村先生と繭の前を電車が通る、
この電車越しにちらちら映る二人が、
まるで人生のフィルムの走馬灯を見ているようで、
二人は幸せの絶頂であろうに、
『G線上にひとり』の切ない旋律と共に、
二人の今後の悲恋を予感させていて、
とても切ないですね。


6話。
サブタイトルが『別れのバレンタイン』
見たくねぇ…。
サブタイトルからして見たくねぇ…。

もうずっと羽村先生と繭、
新庄先生と直の
ほのぼのしたやり取りだけでいいんですけど。




そうそう、羽村先生のお兄さんが
婚約破棄の理由を聞きに新潟から上京してくるんですけど、
兄弟喧嘩のシーンで突き飛ばされたお兄さんが
棚の取っ手に思いっきり頭ぶつけてたけど、
あれ、大丈夫だったんでしょうか。