The King with Donkey Ears

ドラマ視聴素人の感想置き場。自分のために書いてます。

【ネタバレ】妻・おしんにとっての田倉竜三

おしん」における少女編・成年編・老年編は

小林綾子さん主演

第4回~第36回まで(33回分)

田中裕子さん主演

第37回~第225回まで(189回分)

乙羽信子さん主演

第1回~第3回、第226回~第297回まで(75回分)

となっている。


そのなかで常に出ずっぱりなのは、
主役のおしんであることは言うまでもない。

では、その次に出番が多いのはいったい誰か。

正確に全員分カウントしたわけではないが、
おしんの次に出番が多いのは、
おそらくおしんの夫・竜三であろう。

竜三は第60回の初登場から、218回の退場までに、
約128回分出ているのだ。

成年おしん編が全189回なのを考えると
明らかに多いことがわかる。

彼は良くも悪くも、
おしんの人生を常に左右するような旦那で、
彼への評価は乱高下がとても激しい。

おそらく、ドラマ史上最も株価の乱高下の激しい
登場人物ではないだろうか。

そこで、おしんからみた
彼の株価チャートを少し作ってみた。
途中までしか作っていないが…。
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さて、おしんにとって彼はどんな存在だったのか。

それを改めて考えてみたとき、

おしんからみた竜三の評価と、
視聴者からみた竜三の評価は、
かなり差があるのではないかと推測する。

それは、夫婦にしかわからない信頼関係や業、
そして愛情があったように思う。



自分は、おしんと竜三夫婦がとても好きだった。

もちろん竜三はいいところばかりではなく
おしんを苦しめることも少なくなかった。

特に伝説と語り継がれている佐賀編での竜三は
空回りと裏目の連続で、
おしんを何度となく傷つけたと思う。

しかし、おしんは竜三を恨みはしなかった。
「やーめた。」を決行しかけるほど
心が離れたことはあったが、
竜三と再び絆を結びつけ、
それからは心は離れなかった。

故意ではないにせよ、竜三の手によって
首から肩に大怪我を負い、右手が不自由になり、
髪結いができなくなっても、
竜三に恨み言のひとつもこぼさなかった。

それは、竜三がわざとやったわけではないことを
わかっていたし、竜三がとても反省していると思ったからだろう。

最終的に佐和を恨まなかったのも、
竜三と離ればなれにならないように
取り計らってくれたからだ。
(視聴者としては「おしん心が広すぎんか?」と思ったりしたが)

それぐらい、おしんは竜三に対して
執着していたのだと思う。


雄の父親だから。
雄を父親のない子にしないため。


もちろんそれも大きな理由のひとつだと思う。
当時の片親の子供への偏見・差別や肩身の狭さは
今の比ではなかったと聞くし、
雄のために、おしんは多くの辛抱をして
竜三を待ち続けたというのは第一の理由だろう。

しかし、それだけかというと
本編を見ていると疑問が残る。

第132回で、おしんが妊娠していると知った竜三は、
急に漂白剤ぶちこんだのかというぐらい
きれいな竜三になるのだが、
おしんはそんな竜三を見て
心の底から安堵した笑顔を見せるのだ。


一視聴者としてはそのシーンを見て

「おいおしん、その言葉だけで竜三許すんか?」

と感じたのだ。

でも、おしんにとっては許す許さないもなくて、
ただ竜三が笑顔で自分に語りかけて
励ましてくれたことが心底嬉しくて、
幸福だったのだと思う。



第68回で、警察に取り調べを受けていたおしん
身元引き受け人として引き取った竜三が
おしんと共に牛鍋屋で食事をしていたとき。


おしんは田倉竜三という青年を
不思議な人だと思った。

押しつぶされたような暗い気持ちだったのが、
竜三の笑顔を見ているとなぜか和んだ。
今日一日の腹立たしく悔しい出来事も
何でもなかったような気がしてきて、
竜三が勧めてくれる料理を素直な気持ちで
食べているおしんであった。--

とのナレーションがあった。

思えばこのときから、
おしんは竜三の笑顔というものに
安らぎを感じていたのだろう。


だから視聴者には一見わからなくても、
おしんは竜三と再び愛の絆を取り戻すことができたし、佐和を恨まなかったのだと思う。


おしんにとって最愛の人が浩太だというのは
間違いない。


ただ、おしんにとって、生活を共にして、
自分のいい部分もダメな部分も
晒け出せ合えるのは竜三だと自分は思っている。

だから、あんなに佐賀で辛い目にあって
竜三から辛く当たられた日々があっても、

どんなに手紙の返事がなくても、

再び竜三と雄と3人で暮らすことをあきらめなかったし、

竜三の姿を見つけたとき、
あんなに力の限りしがみつき、
逃がさないようにしたのだろう。

もはや執念に近いものだと感じた。


夫婦の最期は、少しほろ苦く、
清のように竜三のことを罵倒したくもなったが、

おしんが竜三の遺志を理解し、
私は竜三は立派だったと思っている
そんなところが大好きだった、
あの人と一緒になれて誇りに思う、と言ったとき、

見てるこっちは爆泣きであった。

財産管理ぐらいちゃんとしとけよバカッ!


とは大声で言いたいが、

おしんは竜三と一緒になれて幸せだったと思うし、

竜三にとっても、おしんを伴侶に選んだことは
彼の人生で一番素晴らしい選択をした。


あの夫婦のことはあの夫婦にしかわからない。

私は、そんな2人の雰囲気が
ものすごくものすごく好きだったのだ。


だから、結末としてはあれもありだと思うが、
一視聴者個人としては、あの夫婦の日常を
ずっと見ていたかったな、というのが本音だ。



田中裕子さんは「おしん」ではほぼすべてに渡って
素晴らしい演技をしていると思う。

そのなかにおいても、
自分は並樹史朗さん演じる竜三とのシーンが
特に好きだ。

見目麗しい二人ということで
目の保養になるという点も十分あるが、

二人のあまりにも自然な夫婦感が素晴らしい。

ただ2人向かい合って
ご飯を食べながら軽口を叩いたり、

お互いをほめあって周りから冷やかされたり、

箱車を一緒に押したり、


そんななんでもないシーンがどれも好きだった。



だから、少数派とは思うが、
自分はおしんと竜三推しであり続けるだろうし、
本編を見返すとしたらまず第73回~114回、
第174回~219回あたりをずっと見るであろう。