The King with Donkey Ears

ドラマ視聴素人の感想置き場。自分のために書いてます。

朝の連続テレビ小説『はね駒』について手短に感想

『はね駒』最終回の再放送も、
先日無事終わりました。
手短に感想をまとめておきたいと思います。


f:id:panpars:20200924165533j:plain

思えば、元々は現在も活躍していらっしゃる方々(斉藤由貴さん、渡辺謙さん、美保純さん、小林稔侍さんなど)の若かりし頃の姿と演技を楽しめればいいなという、軽い気持ちで見始めました。

この枠(AM7:15~7:30)の前番組にあたる『おしん』で大満足したので、期待値は低めに、気楽に見れればいいなと思ったのです。

見終わった後の結論から言えば、
「見て良かったなあ。」
これに尽きます。


正直なところ、序盤1ヶ月ぐらいは
「おりんちゃんかわいいなあ」「橘家の雰囲気いいなあ」「新之助気持ち悪いなあ」「話進まねえなあ」と思いながらボケっと見ていました。
橘家をはじめとする登場人物たちが魅力的だから見続けられたのでしょう。


女学校編も『花子とアン』と比べるとやや単調で、梅沢先生目当てなことは否めないぐらいです。


ペースを掴んできたのは、明治三陸地震津波を描いた回あたりではないかな?
津波津波被害者の描写がリアルで丁寧で、
真に迫るような演者さんたちの演技や演出の妙もあってグイグイと引き込まれていきました。
そこからは素直に脚本にうなり、
展開やセリフに涙するようになり、
「もう『故郷の空』は歌うなぁ!」と、一つの曲にビビるようになりました。(最終回で昇華されたけど)


おりんちゃんの新聞記者への道とか活躍(モデルとなった磯村春子さんが日本初の女性記者だった)は、
ぶっちゃけあんまり満足には描けてはいないと思うし、下宿人トリオや隣人母子や善平くんはもう少し活かせたんじゃないのかとか、
生涯の友のくにさんはなんであんな疎遠やねんとか、
色々突っ込みどころは多いけど、
そういう数多くの欠点を補って余りあるものがありましたね。
ホームドラマとしてはとても良かったです。


f:id:panpars:20200924171439j:plain
回を追うごとに、おりんが狂言回しのようなポジションにまわり、ホームドラマ化していったのは、
やっぱり樹木希林さん演じる
ヒロインの母やえと
小林稔侍さん演じる
父の弘次郎のキャラクターが
制作サイドの想像を超えるぐらい魅力的になり、当時の視聴者に好評だったからでしょう。



樹木希林さんは『はね駒』の演技で賞を受賞しているし、小林稔侍さんはこのドラマが出世作、というのも頷けるほどの役と、それを体現する演技だったと思います。

朝ドラ史上ナンバーワンのヒロイン両親
と言っても差し支えないのではないでしょうか。
少なくとも私はそうです。
やえさんと弘次郎がナンバーワンです。


それぐらい、やえさんと弘次郎の夫婦が大好きだったし、最終回まで生存して、出てきてくれて本当に嬉しかったなあ。
脚本や演出の力もありますけど、
それをも凌駕する二人の化学反応で、
役の運命のみならず、ドラマの展開や結末まで動かしてしまったように思うんですよね。
いやぁ、本当に良かったわぁ。
やえさんと弘次郎のシーン抜粋して延々と見れるわ。
二人のシーン延々と見れるわ。マジで。


f:id:panpars:20200924171156j:plain
もちろん、主演の斉藤由貴さんの演技は良かったです。
当時若干二十歳にして、15歳の少女から子持ちの人妻まで違和感なく演じきるのはすごいことだと思います。

f:id:panpars:20200924171214j:plain
まだキャリアも浅いであろう当時に、あれだけの演技力を発揮できたのは、ご本人の才能もさることながら、周りのベテランに大いに触発されたのではないでしょうか。
もう少し落ち着いておりんちゃん…と思うことも多かったですが、
いつまでもはね駒な彼女がいたから、やえさんや弘次郎、じさまやばさま、おみつが引き立ったこともまた事実です。


f:id:panpars:20200924165604j:plain
f:id:panpars:20200924171056j:plain
静止画でも可愛らしいけど、動いているときの彼女のころころ変わる表情や瞳の動きや輝きは何度も魅入りましたし目が離せませんでした。



もしかしたら、これが『魔性』というのかもしれませんね。


f:id:panpars:20200924165622j:plain
源造を演じた渡辺謙氏もやはり素晴らしかった。
時々「おい、戦国武将みたくなってんぞ」
と感じるほどの眼光の鋭さや
「おい、独眼竜になってんぞ!」
とビビるほどの怒ったときの声の大きさでしたが(撮影は少し被ってたのかな)
責任感があって男らしい源造には、
渡辺謙さんはまさにぴったりでした。

おりんちゃんと源造がいちゃつく場面では、
中の人同士の相性の良さもあるのか、
朝から見てはいけないような色気を感じて
「うおぉい…」とおっさんみたいな声が漏れることもしばしば。変態かよ。
でも本当に色気がすごかったんですよ。

f:id:panpars:20200924171114j:plain

私は大物になってからの
ケンワタナベ氏しか知らなかったので、
若手俳優としての彼の、溌剌とした演技を存分に見れたことも『はね駒』を視聴して良かった理由の一つです。


魅力的なキャラクターはたくさんいましたよね。


凛とした気高さと柔軟さをあわせ持つ、橘家の柱のじさま、

穏やかながらも皆を見守っていたばさま、

実質生涯の友化したみどりさん、

死ぬまで新しいもの自分が好きなものに没頭し続けた嘉助あんちゃん、

あまりにも不憫なおみつ(最終回でおみつらしき人が後ろ姿で出てきたの見てオレ泣いちゃったよ!)

松浪先生にひそかに好意を持つ中性的な梅沢先生(ドレスを試着するシーンは息のんじゃったよ!)

一途で真面目で優しいのにどことなく気持ち悪い新之助(終盤も出てきたのは当時もこのキャラ好評だったからだろ!!わかるよその気持ち!)

自分がたとえ全てを失おうとも、
神への忠誠も他人への優しさも失わない鶴次先生(おキヨちゃんがおむすび食べさせるシーンでオレ爆泣きよ)

面倒くさいけど心優しいところもある源造の両親(長男の名前を『弘』に!ってシーンは、弘次郎が弘を抱いたシーンでじわじわ涙出たね!ぶわっときたね!)

厳しくもおりんを見守る津村編集長、

三者三様も橘家への恩義を忘れない下宿人トリオ(もう少し活躍と行く末見たかったんですけど!)


最終回まで見てこられたのも、魅力的なキャラクターがいたからこそ。これは何度も言う。
欠点は多かれど、良いドラマだったと思います。





おしん』は橋田壽賀子氏によるガチガチのメッセージ性と作家性あふれる脚本で、
動かしようのない完璧な型のなかで演出や音楽や演者たちが負けないパフォーマンスを見せる形態のように感じます。
そこに視聴者はほぼ介入せず、享受者でした。


それに対して『はね駒』は
ある程度の道筋と目印は示されているまっさらなキャンバスのような脚本に、演出や演者が彩りを加えていき、更にいくつかの大人の事情や視聴者からの反響が作品の展開に介入した、
双方向的な要素も含んだタイプの作品だったのではないでしょうか。


おしん』は橋田氏の「これは〇〇だから、こういうことだ!」という主張が余すことなく説明され視聴者に直接的に届くイメージで、
『はね駒』の場合は、間接的で控えめな表現も少なくなかった。視聴者に考えさせて、感じ取らせる、というか。あえて説明しない。

物的証拠と状況証拠的な違い?なんじゃそら。


どちらがいい悪いではありませんが、
個人的には、最終週は『はね駒』の方が
視聴者満足度は高かったかなぁ…。

こっちが求めているものを見せてくれたというか。
視聴者の声に応え過ぎるのも考えものなんだけどね。『はね駒』はそこらへんのさじ加減が良かったと思う。



もっと小野寺家と橘家の人々が見たかった、けど、もっと見たいと思うぐらいで余韻持って締めるのが一番いい最終回かもしれません。


再放送してくれてありがとう、NHK!!




























次作の『澪つくし』はジェームス三木氏脚本ですから、前者タイプなんだろうな。

実は第45回まで一気に見ちゃったんですけど、
私は『澪つくし』すごく好きですね。
人それぞれ、賛否両論な価値観もあるかもしれないけど、これは止まらんです。
ジェームス三木氏の脚本の巧みさがすごいし、
演者の上手さがエグい。これは沢口靖子さんも含みます。(棒じゃねえじゃん!!!めっっちゃかわいいやん!!ある意味ガッカリ!!でもかわいい!!!)
話が進み出すのは第5回からかな。
メインキャラがどんどん出てくるから。
はーー楽しみ。