The King with Donkey Ears

ドラマ視聴素人の感想置き場。自分のために書いてます。

普通の一日

全米オープンはメドベデフが優勝。
おめでとう。

あのエガちゃんみたいなパフォーマンス、
初優勝の瞬間なんて一生残る映像なのに、
彼はあれで良かったのだろうかと思うが、
本人はウィンブルドンのときから考えていた
決死のウケ狙いパフォーマンスだったらしいので、部外者の私は何も言うまい。

ある意味、かなり印象に残るパフォーマンスだったことは確かなのだから。

彼のキャラクターは特異で、
悪役上等、観客冷えてもなんとも思わない、
という開き直りっぷりが見ていてとても小憎たらしい。
しかし、あの皮肉屋キャラは、
オンリーワンにはなれるだろう。
悪役には誰もなりたがらない。
しかし、何事も突き抜けていればそれもキャラクターとなる。



朝ドラ『あぐり』は毎日楽しく見ているし、
素晴らしい作品だと思っているが、
最近高嶋政伸さん演じる
林という新キャラが登場してきてからは、
何ともモヤモヤさせられている。

ヒロインであるあぐりの再婚相手であることは知った上で見ているのだが、
どうにもこうにも、
彼に全く魅力を感じないからである。
それなのに話の中心になって、
あぐりや子供たちが巻き込まれているので、
私が好きだった世界に、異物が混入してきた感覚なのだ。


高嶋政伸さんのことは好きだから複雑だ。
HOTEL』とか『ダブルキッチン』『秀吉』など、彼の演技は素晴らしかったし、
『DOCTORS』のすぐるちゃんなんて、愛すべきキャラである。

しかし、『あぐり』に限れば、
見れば見るほど、私は林という男に
苛立ちを覚える。


この感情、どこかで似たようなものを感じた経験があるなあと思っていたのだが、
最近思い当たった。
『ずっとあなたが好きだった』の大岩くんだ。


あの作品もまた、大岩くんは
魅力的な相手役として配置されていた。

''冬彦さん''という、強烈な夫との夫婦生活に疲れたヒロインが、初恋の相手である大岩くんと再び惹かれ合い、最終的には大岩くんと再婚することになるドラマなのだが、
『ずっとあなたが好きだった』を見たときも、
常にモヤモヤを感じながらの視聴だった。
なぜなら、大岩くんが
全く魅力的ではないからである。

粗暴で、頭が悪く、婚約者がいるのにもかかわらずヒロインの美和に入れあげて、
注意されてるのに何度も近づき、
周りを傷つけまくっているのに、
気にせず美和との初恋に浸っている。

結局彼らの勝手な振る舞いの尻拭いをしたのは、婚約者とその兄と、
妻を取られた格好となる冬彦さんだった。

私は最近『ずっとあなたが好きだった』を見たのだが、冬彦さんの気味悪さもさることながら、
美和と大岩くんのあまりの情けなさと無神経さにとにかく腹がたった。
途中から、これは精神衛生上よろしくないと判断し、二人のシーンは早送りしたぐらいである。

作中の美和と大岩くんの盛り上がりとは裏腹に、視聴者の私は、
冬彦さんと大岩くんの婚約者の
あまりの不憫さと健気さに、見ていて感情移入をしたし、涙も流した。

作品では美和と大岩くんは純愛を貫くヒーローヒロインなのだろうけど、
私は、どうしてもそうは思えなかった。


もっとも、冬彦さんに関しては、
当時から一大ムーブメントとなり、
脚本が大幅に書き換えられ、
純愛ドラマから冬彦さん中心のドラマとなっていたので、そもそも制作側に美和と大岩くんの純愛ドラマを丁寧に描く気概があったかどうかは不明である。
それぐらい、途中からは
冬彦さんと美和の関係性の方が、
丁寧に描写されていた。
本来相手役であった大岩くんを演じた布施博さんは、本当に気の毒だと思う。


話を『あぐり』に戻すが、
林さんとあぐりの話を見ていて、
私はその苛立ちと似たようなものを感じた。

要は、作中の設定と視聴者の私が感じるものの温度差の問題だ。
きっとあぐりは無意識的に林さんに好意を抱いている。
林さんに至っては、あぐりへの好意丸出しである。
これは、田中美里さんと高嶋政伸さんの細やかな表情の演技で伝わってくる。
二人ともベストを尽くしているとも思う。


林さんがどうにも魅力的に思えないのは、
彼がずっとあぐりに頼り、
迷惑をかけっぱなしだからだろう。

二人の距離を近づけるために
林さんに風邪を引かせ、
家を火事で失わせてあぐりの家に居候させ、
娘の和子に頼まれるまでは
我が物顔であぐり家に居座り、
出て行った後も仕事で行き詰まって酒浸りにならせ、
挙句の果てには放火魔に刺されるのだ。

これでは、視聴者が
ついていけないのも当たり前だ。
どれだけ無神経で厚かましいのか。
そのわりには、他人の無神経さは許せない。
こんな展開で、誰が林さんとあぐりの再婚に感情移入するというのか。



あぐり』の脚本は自由で軽やかで、
それでいて言葉を大切にする、風のようにさわやかなところが良い。
テンポもよく明るいし、見ていて疲れない。
それでいて内容やメッセージ性も
押し付けない程度にふんだんに盛り込まれている素晴らしさがあると思う。

しかし、林さんに関しては
脚本家のやっつけさを感じる。
残り2週で再婚エピソードを消化するのは
厳しかったのだろう。
こればかりは仕方ない、と諦める他ない。

私はリアルタイムで放送されていたときも見ていて、どうしても林さんには好意を抱けず、記憶からその前後の展開を抹消していた。
これは、私がエイスケさんファンだからだろうなと思っていた。
それぐらい、私はエイスケさんが好きだったのだ。

今回再放送され、当時は子供だったから
分からなかった林さんの良さも、
大人になった今なら分かるだろうと思って視聴していたのだが、大人になった今でも、林さんの良さは全く分からないまま。
当時から林さんの評判は
良くなかったと記憶しているが、
時代が変わっても価値観が変わっても、
彼への評判は変わらないようだ。
これは、ある意味すごいかもしれない。

とはいえ、再婚後の林さんは
まだ好きになれる余地があるかもしれないので、何とか今のかったるい再婚までの道を
我慢して視聴し、乗り切るしかないとは思っている。


それにしても、『おしん』『はね駒』『澪つくし』『あぐり』と見てきたが、
どんな名作ドラマでも、
序盤のもたつき、中だるみ、蛇足、と色々あって、最初から最後までずっと名作ってのは
朝ドラでは難しいんだな。
もはや、ほぼ不可能に近いのかもしれない。


とはいえ、『おしん』『はね駒』『澪つくし』『あぐり』は、ここ数年の朝ドラと比べたら
目に見えてわかるほど出来の差は歴然。
評判のいいヒット作ばかり再放送に選ばれているのだから当たり前なのだが、
結局朝ドラは、テンポの良さが
最重要な要素なんだろうなあ。

マー姉ちゃん』は全く知らない作品で
少しだけ不安だが、これも視聴を楽しみにしている。