The King with Donkey Ears

ドラマ視聴素人の感想置き場。自分のために書いてます。

高校教師 第1話

『高校教師』(1993年)はね、
私のものすごく大好きなドラマなのです。



リアルタイムでは見る環境にも年齢にもなってはいなくて、
おそらく2003年あたりに、深夜で再放送していたのを見たんだと思いますが、
まんまとハマってしまったことを
今でもはっきりと覚えています。

その後も、幾度か再放送されるたびに
きっちり見ていますし、
そのたびにどっぷりと作品の世界に浸かりきって、なかなか正常には戻れません。


それぐらい、この『高校教師』というドラマには、私にとって麻薬的作用があるのです。

内容的にはとても辛いことの連続なのに、
どうしても続きを見てしまいたくなります。

羽村先生と繭に逢いたくなるし、
新庄先生と直にも逢いたくなる、
またあの世界に浸かりたいという気持ちが勝ってしまうのですね。


そんなドラマが、BS-TBSで再放送されるというのだから、これはもう見るしかない。

最後に見たのはおそらく5年前か6年前ぐらいですから、
当時は鮮明であった作品の輪郭は、
今では思い出そうとしても、一部一部がぼやけて見えるのは必定でありまして、今回の再放送を通して、再びあの世界に入り込みたいと思ったのです。

無論、今でもはっきり覚えていることも
たくさんあります。
あまりにも有名すぎるラストシーンを含む
数え切れないほどの名場面や、
主役である真田広之さんや桜井幸子さんをはじめとした
出演者たちの熱演もそうですし、
繊細で緻密な演出や映像もですし、
何より、森田童子さんの楽曲の数々は、
このドラマのために作られたのではと錯覚してしまうほどあまりにも作品にハマり過ぎていて、
今でも何曲はソラで歌えてしまうほどなのであります。
(ちなみに私が一番グッときたのは『男のくせに泣いてくれた』です。流れる場面補正が強いです)


おそらくこのドラマは数十回はゆうに見ているので、どうしても今後の展開を頭で思い浮かべながらの視聴となります。
よって、ネタバレをしている部分も出てきますが、そこはあまりにも有名な名作ドラマでありますから、

むしろ内容を知らない方がおかしい

という前提で感想を書こうと思っています。

1話は、個人的にはあまり記憶に残っていなくて、
というのも2話以降があまりにも衝撃展開の連続でありますから、
1話はまだ普通の学園ドラマの様相を呈していて、
当時幼かった私の記憶には
深く刻まれることはなかったのかなと思います。


しかし、今回改めてじっくりと1話を見返してみると初回から不穏と破滅の種を、着実に撒いているのだなと分かりました。

今作は、撮影前に既に全話の脚本を書き終えていたらしいですから、全く無駄がない緻密さが素晴らしいです。


「助けて」と書かれた手紙、
羽村先生に執着し追いかけ回す繭、
羽村先生の部屋に繭がいても動揺しない婚約者、
何なら浮気している婚約者、
どう見たって怪しさの塊でしかない繭の父の狂気、
新庄先生と息子の暗い過去、
3ヶ月我慢すれば研究室に戻れる、
平凡な生活に戻れると自分に言い聞かせる羽村先生。


初回というのはどうしても登場人物や
ドラマの舞台の説明が必要で
やや単調になりがちだと思うのですが、
羽村先生と繭の出会いや、
羽村先生の人物設定(3ヶ月だけ高校教師をやるとか、婚約者の父親が研究室のえらい人だとか)
藤村先生や新庄先生の人物のざっとした説明、
その他も不穏の種を数多く、自然に描写していて感心しました。


次回への引きも上手いですね。
平穏で穏やかな未来のために、
3ヶ月間慣れない教師生活を我慢しようとする羽村先生と、
その裏で婚約者が浮気していることを知ってしまった繭という構図。

平凡でいようとする羽村先生のもとに繭が
「先生に逢いたかったの」と、
雨でびしょ濡れ姿で駆け寄る展開で初回終了。

羽村先生の平凡な人生を狂わせてしまうのが
繭なのだと予感させるようなつくりです。


羽村先生を演じる真田広之さんも上手いですよね。
真田さんは『非婚家族』というドラマが
私にとって初見でありまして、
その後に今作を再放送で見たものですから、
てっきり真田さんはナヨっとした役が得意な俳優さんなのだと思っていました。

しかし、むしろ硬派な役やアクション系の方なのだと後々知り、
なおさら『高校教師』での演技の素晴らしさに気づくことができたのです。
どうみても理系で気弱、運動が苦手な男に見えますからね。
穏やかで優しく控えめだがどこか抜けている、
ナイーブさも併せ持つ羽村先生を見事に演じていると思います。
そりゃあ繭も羽村先生に惹かれるはずだ、と
心底物語の展開に納得できるのです。

真田さんは全体的に文句のつけようがない熱演で、
彼の細やかな演技だけでも、このドラマを見る価値があると確信しておりますが、
ただ一点。
真田さんレベルのハンサムな男性教師が赴任してきたら、絶対モテモテになると思うのです。
そこは、少し疑問に思います。
それぐらい今作での羽村先生の扱いは、
なかなかきついものがありますね。


そして、桜井幸子さん。
彼女もまた特筆すべき演技です。
『高校教師』の成功は、彼女を繭役にキャスティングできたことがとても大きいと思います。

繭という役はとても難しくて、
初回を見るだけでも分かりますが、
常に羽村先生を振り回す、そして次第に羽村先生の運命を変えてしまう女の子でありまして、
そんな難役を、最終的に当時日本中から応援される女の子に昇華できたのは、脚本や演出の力も大きいですが、
やはり桜井幸子さんのあの透明感とミステリアスさと可憐さが最重要であったと感じます。


事実、私は2003年に再放送で見た際、
序盤でははてなマークがついていた繭に、
2話以降グイグイと心を奪われていき、
羽村先生と同じぐらい、彼女の魅力に墜ちていった経緯がありますので、この作品以降、野島伸司氏が桜井幸子さんを重用したのも理解できるのです。
それぐらい唯一無二のピュアさがあったと思います。



やはり、羽村先生と繭の純愛が
あまりにも繊細で儚く高潔であったのが、
このドラマの最大の成功要因であり、
それを体現した、真田広之さんと桜井幸子さんの名演と美しさは『高校教師』という作品を語るうえで避けては通れませんね。


初回はまだまだ小手調べ、
2話から本格的に話が動いていきます。

好きな場面もさっそく複数出てくるので
楽しみでありますが、その反面、
未だに直視できそうもない衝撃シーンが
あることもきちんと認識しているので、
憂鬱さも含有した複雑な感情を持って、
次週を待ちたいと思います。


ちなみに、初回の段階で
藤村先生と繭の父親が出てきたときは、
「ぎゃああっ!お前ら出てくんなあっ!」と
心の中で叫びました。ごめんなさい。