The King with Donkey Ears

ドラマ視聴素人の感想置き場。自分のために書いてます。

【ネタバレ】『澪つくし』を悪意的目線で考えてみる

BSプレミアムで朝の7:15~7:30に
再放送されている朝の連続テレビ小説澪つくし』(1985)もいよいよ佳境。

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かをる(沢口靖子)が家のために
梅木さん(柴田恭兵)と再婚を決意してしまうという、なんとも胸くそ悪いモヤモヤした展開になってきていますね。
毎日モヤモヤしながら見てます。
一応最終回まで一気にざっと見てるから、
何とか耐えられてるけど、(今の胸糞展開もここにつながるのか!とか分かるからね)
これリアルタイムだと、胸をやきもきさせてたんだろうなあと思いました。




とりあえず、どうしても突っ込んでおきたい展開を、どうしても茶化さずにはいられなくなったので、今回は書き残しておきたいと思います。

アンチ梅木としての冷ややかな怨念を
精一杯込めたつもりです。



なお、当たり前ですが
ネタバレしちゃってる&悪意的主観的目線に満ちた感想なのでご了承ください。






●不屈の最強メンタルヒロイン・かをるについて

・時代の運命に振り回されたかをるの人生について振り返ってみる
朝の連続テレビ小説澪つくし』は、当時おしんに次ぐレベルの人気と社会現象を誇ったと言い伝えられている名作朝ドラです。

そして『澪つくし』主役であり、ヒロインが
沢口靖子さん演じるかをる。
見た目が非常に美しいこともさることながら、
どんな苦難に直面しようとも、
どんな悲しい出来事が起こっても、
前を向き今自分が出来ることを貫こうとする
芯の強さを持っています。




しかし、ですよ。
序盤の方はかをるの強さに感心しました。それは事実です。
でも、物語が進むにつれて、
ん?と思う場面が徐々に増えていくのです。
かをるはまさに応援できるヒロイン像そのものなのですが、
ドラマを見進めていくうちに、
どうもかをるは常人ではないレベルでの
メンタルを持っているのではないか?
という説を抱かざるを得ない。

立ち直りと切り替えの速さが、
とにかく何か、凄まじいというか……。


かをるが律子に頼まれて水橋に
活動資金を渡しに行って、
警察に捕まって取り調べを受けるあたりでは、
かをるの我慢強さはまだ理解できるレベルだったと思います。
拷問を受けたわけでもないし、
確固たる意志がありましたからね。

しかし、律子が河原畑や水橋との無理心中事件に
巻き込まれてすっかりふさぎこんでいるとき
かをるの発言に大きな違和感を覚えました。
(今思えばこの段階でかをるの異常なほどの切り替えの速さに気づいておくべきだった)


「こんなことでくじけちゃ律子さんらしくないですよ!済んでしまったことは仕方ないでしょ、新しい女として生まれ変わったつもりで頑張ってください!」



……サイコパスかなんかかお前?
仮にも律子きっかけで
2人の人間が死んでるんやぞ。
実際律子は罪の意識感じて憔悴しているというのに…。

それにひきかえ、律子に水橋の居所を教えて
無理心中事件の遠因になった
かをるのこの切り替えの速さは
一体何なんだろうか?

この人、絶対罪悪感とか責任とか
ろくに感じてないだろ。
律子が生きてるしオッケー!って感じなんだろうか。
この場面、初めてかをるが怖く見えました。


それから、惣吉が死に子供も流産し、
さすがのかをるも心身ともに疲れきっていたのですが(視聴者もすでに疲れきってる)
なんか思っていたより早く立ち直って、

「醤油が可愛くて仕方ないの!」
とかよくわからないことを言い出し、
入兆の醤油に異物が混入されていると警察から言われ窮地に陥れば
持ち前の科捜研スキルと知識を活かし
冷静な対応と指示を周りに呼びかける。


おい、お前誰だよ。
網主のおかみ経験はそんなにすごいんか?
おかみ万能説なのか。
面白いなーと見ていても、一方で
かをるの潜在能力とその切り替えの速さに、
心をざわざわさせていましたよ、こっちは。



かをる、こええ、と本格的に思ったのは
梅木と再婚したあとに惣吉の居所が見つかって、惣吉の記憶を取り戻すために、
二人で舟に乗り海を漂うシーンでしょうか。


惣吉が記憶を取り戻し、
かをるに待たせてすまない、
心配させてすまないと駆け寄るんですけど、さっと制して
「私、再婚したんです」
っていうシーンの残酷さな!!!!!つら!!!!!!!!!
このドラマのなかでも一番残酷なシーンじゃないかと思いました!!!!

いやいずれは言わなきゃいけないことだけど、
なにも記憶が戻った直後に
言わなくてもいいじゃないすか……。


そしてそのあと、梅木と二人して
惣吉に何の釈明も謝罪もなしですよ、
逃げ回るんです。入兆に引きこもるんです。

そりゃ漁師連中もかをる誘拐するわい。
一言ぐらいなにか説明するのが筋だろうて。



それだけじゃないんです、
梅木が例によって惣吉への嫉妬とコンプレックスを爆発させ酒に溺れ、かをる突き飛ばしたり
潮来旅行の写真とかを遠回しに処分させたりと
笑えるレベルで闇落ちぶちかましたときも、
なぜか惣吉を非難するんですね、かをるは。


「あなたがいるから、幸せになれないんです」とか言うんです。


おーーーいなんでやねーーーん。

惣吉の!惣吉のせいなの?!
梅木さんの豆腐メンタルと入兆側の説明不足のせいじゃないの!?びっくりした!


これはさすがに、
さすがに見ていてびっくりしたり、
かをるの容赦なさに、
視聴者としては半ばドン引きしました。
(そもそも入兆サイドが、吉武惣吉今さら帰ってくんなよみたいな態度だったのにも既にドン引きしてたんだけどね)

ま、おそらく惣吉が
他人の幸せや環境を尊重できる、
自分の幸せより他人の幸せを願える
そんな人間だと確信していて、
あえての発言なんだと思います。

梅木さんはそうじゃない。
メンタルがお豆腐なので、下手に非難したら、
さらにとんでもないことをしでかしそうだし。

惣吉もまた、かをるが自分のことを
今でも愛していると確信しているから、
かをるの冷徹な願いを受け入れ、
銚子から姿を消そうと心に決めたんでしょうね。


でも、惣吉と涙の別れをしてまで
かをるが守ろうとした入兆の穏やかな幸せは、
戦争によってほぼ壊滅。
母は空襲でほぼ即死、
父は創業300年の入兆の未来と律子の安否を憂いながら無念の死を遂げ(英一郎のことはどうした久兵衛!!)
律子も肺結核で亡くなり、梅木もゲリラに撃たれ戦死。どんだけやねん。
こんなん普通は発狂案件やで。
ジェームスは鬼かと思いました。
無情。ああ無情。



しかし、かをるは落ち込みません。
さすがに何日かはウルウルしてたり
呆然としていましたが、
父が死ぬ間際まで願った入兆再建のために
英一郎を支え自分の人生を捧げると決意。

メンタルが……メンタルが鋼すぎんよ…。
ここは、素直に
かをるすごいな!とその強さに感動しました。


私が突っ込みたいのは、
梅木さんが戦地に行ったあと、
わりとすぐ梅木さんの生存に対して
悲観的だったところなんですよね。


もう、諦めてます、とか


おそらく生きて帰るのは、と悲観的。

あ、諦めがはええ……。

言霊になるから、
軽々しくそんなこと言うんじゃねえよ……。


そんな発言をするたびに、
こともあろうに惣吉やとねさんに
励まされる始末。なんでや。おかしいやろ。


そして、惣吉から梅木の墓の前で
求婚されたときも、固辞はするのですが、
心の中では「いつか入兆が再建し、海外からの輸出がくるようになれば、また結婚を申し込んでほしい」
との夢を固めてるんですよね。


梅木への未練一切無しかーーい!!


私は一生梅木の妻です的な素振り全くなし!!!
いつかまた惣吉さんと結ばれたい、
そのために仕事頑張るぞ…みたいな!!
惣吉との純愛成就が私の澪標です、みたいな!!
おーーーい!!ドライやなお前ェ!

分かってるよ分かってる、
子どもたちや入兆の幸せのために
惣吉への気持ちに蓋をしたんだもんな、

わかってるんよ!
でも、でも、ドライやなーっ!


初見ではこの終わり方に舌を巻いたし、
現実的なハッピーエンドとして受け止めて
ジーンとしたのですが、よくよく考えると
すっかり蚊帳の外状態の梅木が
少し不憫になりましたよ。

惣吉が「梅木さんならわかってくれるはずだ」
とか言ってましたけど、
あの人は分かってくれないと思うよ!
あの世から見て歯ぎしりしてると思うよ!

かをるへの執着心ものすごかったしな!!
子供できるのちょっぱやだったしな!!
できてよかった!昭彦と和彦いなかったら、梅木さんのこととかそれこそ1ミクロンもかをるの心に残らなかったことでしょう!
(……そもそも子供がいなかったら
かをるは惣吉と逃避行していた可能性も無きにしもあらずなんだけど)


いやはや、かをるの不屈さと芯の強さには素直に尊敬の念を抱くのですが、
切り替えと立ち直りの速さとドライさは、
なかなか真似出来ねえなあと思いました。

純真真っ白ヒロインじゃなくて、
どこか現実的でドライな人物像。

脚本担当のジェームス三木
女性観が反映されたのかなあ。
単に尺が足りなくなったから、
かをるの葛藤とかとりあえず少なめになったのかな。

後者の説を推したい。
最終週に両親と姉と夫死なせてますし、
あと1週分ぐらい話数の尺があったら
かをるの人物描写も違ったのかもしれませんね。



持ち前の美貌とドライさと芯の強さと科捜研スキルに加え、外川での網主の女将経験により、
かをるの有能さはさらに磨かれました(有能だったのか……)
入兆の新しい当主は英一郎だけど、
参謀はかをるです。
というか英一郎は愛すべきマスコットで、
かをるがいろんなことを取りしきるんだろうなと思っています。

久兵衛の人当たりの良さと優しさは、
英一郎が受け継ぎ、
商売人としての全体や先を見通す力を受け継いだのがかをるじゃないかな。

あとは、神山さんに加え
復員した小浜や赤川あたりが
上層部として二人を支えるだろうし、
大人になった昭彦と和彦も加わるのでしょう。


そして、きっと惣吉さんも
かをるの手助けをすることでしょう。
入兆の当主となった英一郎や
武家の親方の善吉が
なにかとセッティングしそうだし、
かをると惣吉二人ともいずれまた
夫婦になりたいという共通の夢を
持っていますからね。

まあ、なんだかんだで
現実的なハッピーエンドでしたね。



●驚異的な生存能力を持った男・吉武惣吉

とにかく不死身の惣吉さん。
かをるの夢の中に生霊飛ばせる惣吉さん。

当時はかをるの相手役として
絶大な人気を誇ったと言い伝えられていますが、
惣吉さんの人生は、得体のしれない何かに加護されているとしか思えない驚異的な生存能力なのです。



そんな彼の人生を、
ざっと振り返っていきましょう。



・惣吉さん奇跡の生還の歴史
第102回で、海に投げ出されて
遭難した惣吉さん。
同じく海に投げ出された磯部は
死体で見つかったというんだから、
惣吉さんも死んでしまったと
受け止めるのが自然の流れです。
(ただし、視聴者側としては『死体が見つからない=実は生きてるんじゃね?』との思いを廻らせるのもよくある話)


第132回だったかな、東京に住んでいる律子が
入兆に戻ってきて、かをるに
「惣吉さんによく似た人を見た」
って伝えるんですよね。(おめーはいつも衝撃の展開のきっかけを持ち込むよな律子!)
実は惣吉さんは生きていて、アメリカの巡洋艦に拾われてフィリピンで記憶喪失の日本人として過ごしていた、みたいな。
オイオイ、海に投げ出されて生きてたのかよ…。
ジョン万次郎か…?


でも惣吉さんの奇跡の生存伝説は
これだけにとどまりません。

軍からの依頼で戦争物資運搬の任務についていたとき、マラリアにかかって一時外川に返された惣吉さん。
しかし半月もしないうちにまた任務に戻ったと。
オイオイ、マラリアでも惣吉さんの生存力には勝てないのかよ…。


さらに、かをるが空襲を避けて
防空壕へ逃げ込んだときに、
助けてくれた兵隊さんが惣吉。
うわー運命の相手って感じダネ!!!
防空壕のなかで語り合う二人。
惣吉が言うには、
サイパンと横須賀を往復していたとのこと。
ええ、サイパンに行っても死ななかったのか…。


戦中史詳しく知らない自分でも、
サイパンってやばい単語だと知っています。
それでも生き残る惣吉さん、マジパンク。


この次は沖縄に行くとのこと。
沖縄なら!!
今度こそ死んじまうんだろうな!!


見ているこっちも、
かをるすらもそう覚悟したと思います。

がっっっっ!!!
惣吉さんまたもや生還。無傷で生還。
オイオイ、どうなってんだよ…。(戦慄)


海に投げ出されても、
マラリアにかかっても、
戦争中サイパンに行かされても
沖縄に行かされても生き延びた男、吉武惣吉。
もはや神様に守られているとしか思えない惣吉。


凡人の梅木さんには、
ハナから勝てる相手じゃなかったんだよ…。
梅木さんは悪くないよ…。

●お豆腐メンタル梅木さん〜華麗なる闇落ちの軌跡〜f:id:panpars:20210213171932j:plain

柴田恭兵さんが演じてらっしゃるので、なんとなくかっこよくて誠実な役なのかな?
と錯覚してしまいがちですが、個人的には梅木健作という男、
なかなかの豆腐メンタルの持ち主だと思いました。


途中からは梅木さんに関しては
正直ちょっと半笑いで見てしまって、
でも恭兵さん熱演してるなーかっこいいなー。
でも梅木さんよわっ!小物っ!と相反する感情が同時に出てきてしまう始末。

そして、なかなかの
悲惨な死を遂げるんですよね。

まるで小物でごめんね、
ダークサイドたびたび落ちてごめんねとの贖罪のような、どうしようもない死に方。
遺書すら残させてもらえず、
かをるからはわりとすぐうっすいところに思い出を収納されてしまう始末。
た、たぶん尺が足りないからだよ、きっと…。

だから、私にとっては梅木さんは
報われないネタキャラです。


・梅木さん、酒に呑まれた歴史を振り返る
かをると惣吉の結婚が決まって、
梅木さんは酒に溺れて広敷連中と愚痴のこぼしあい。

まだこのころはマシだったんですよ。
まだ梅木さんのお豆腐メンタルに気づいてなくて、「やだー好きな女の子が結婚して荒れる姿カッコイイ」
なんて呑気なことを考えていました。


問題は、律子との縁談話を
一旦提案されたのに、すぐ無かったことになって、荒れたときですよね。
情状酌量の余地はあるよ?
野心家の梅木さん、律子と結婚なんて戸惑っていたけど、
重役になれるという誘惑にその気になっていたからね。(重役気取りで作業場うろちょろしてた描写が効いていたね)
いきなり梯子を外されて、自分が情けないやら、その扱いに憤りを感じるやらで、
感情の整理が追いつかなかったのよね。


でもさあ、慰めに来たハマさんに
手を出すのはどうなのよ!
しかも外で!しかも外で!(大切なことなので2回言いました)
久兵衛にモノ扱いされて憤っていたくせに、
ハマさんを自分の憂さ晴らしのために
同じようにモノ扱いするのは許されるんか?
そこらへんどう自分に
折り合いつけとるんや梅木ィ!!

しかもその1回だけならまだしも、
その後も何度も何度も外で会ってるって、
律子や番頭さんにバレバレだし。
バカ。ほんとバカ。なんで外だよ。

「所帯を持つ気はありません」「遊びじゃありません」
って



は?
は????
はァァァァァァァ??????



もうはぁ?しか頭に浮かばんかった!!
ハマさんの気持ちを利用して!
「お互いに過ちを犯したんだ」
とか抜かしてたけど!!過ちはお前だけやぞコラァ!

酒を飲んだことによる理性をなくした過ちが、
ここまで人の本質をあらわにするのは怖いねぇ。


こんだけじゃないんすよ。
惣吉が帰ってきて、
すっかりかをるの本当の気持ちに疑心暗鬼になって酒に逃げる梅木さん。

オイ。お前学習せんのか。
酒とお前はトラブルの元だと、
いい加減学習せえへんのか黒梅木。


案の定、毎晩毎晩夜遅くまで
飲み歩いてはかをるを傷つけてた梅木さん、
挙げ句の果てには迎えに来たかをる突き飛ばしちゃう。
ついでにかをるに向かって失言しちゃう。
ハマさんと自分の過去の関係を
かをるにあてつけで言っちゃうんですね!

ギャハハ!!爆笑!!大爆笑!!
まいりました!!




…ってオイ!!!!

バカ!!クソバカ!!

もう酒は飲むな言うたやろがい!!!
何回言えばお前は分かるんや
このお豆腐メンタルがっっ!!!


ハマさんは真鍋と再婚して
なんだかんだで上手くやってんねん!!
わかっとんのか!
かをるとハマさん気まずくなるやろがァ!

(でも当の二人は特に揉めることもなく穏やかなままでした。う、器でけぇ…。)


とにかくツッコミどころ多くて、
頭抱えちゃいましたよ。あのお豆腐ぶりには。
まあある意味面白いんでいいんですけど。
笑えましたからね。爆笑しましたから。


いや、本当に笑えるんですよ。

柴田恭兵さんが演じてなかったら
ぶっ飛ばしてますけど、
でも恭兵さんが熱演してるから、なんとか見れる。


惣吉が銚子を去ったあとの
ウキウキっぷりもおかしくておかしくて。

さすがにちょっと豆腐メンタルに描きすぎたとジェームス三木も反省したのか
英一郎の松岸芸者との妊娠騒動で
『頼りになるカッコイイ夫・梅木さん』みたいなシーンがあるんですけど、
前科が何しろ強烈過ぎて
「でも梅木さん本質はヘタレの小物だよね」とか
「はいはいかをると惣吉さんの件で落ちまくったイメージを回復させるための展開ね乙」とか
スレた意地悪な自分が
ついつい出てきてしまうのです。
ツエさんがアミちゃんに突如差別的発言をして榮二に暴力振るわれるシーンも、
梅木が突如白梅木になってツエを諭す、
みたいな展開で、
「はいはいかをると惣吉さんの件で落ちまくった梅木さんのイメージを回復させるための展開ね乙」
と頭の中で反芻してました(どんだけ…)
だってツエさんって
そんなこと言う人じゃねえじゃーん?




ごめんよ梅木さん。
でも梅木さんがヘタレなのが悪いよね。


・ダークサイド落ちの歴史を振り返る(ほぼかをると惣吉絡み)
酒絡みの失敗については割愛。

基本的に惣吉さんに対して
殺意の波動を放ってますよね、梅木さんは。

恋しいかをるさんをゲットした
にっくき恋敵であり、
久兵衛から高く評価された男でもある惣吉さん。
劣等感を感じちゃうのかな。

かをると念願の結婚を果たして、子供も産まれて
ようやく幸せに満たされていたのもつかの間、
律子から「東京で惣吉らしき人を見た」というとんでもない情報が入ってきます。


でもね、そこは幸せに満たされて
すっかり自信満々の男・白梅木です。
大人の男としての器のデカさ発揮ですよ。


記憶喪失で外川に帰れず孤独でいる惣吉のために協力しよう!というかをるに同調。


し、白い…。これは正義の男。
映画版梅木健作。きれいな梅木。

無事惣吉の記憶も戻り、めでたしめでたし。


にはならないんですよね。
当たり前ですけど、惣吉は納得できない。
かをるとなんとか話をするべく、
入兆に行くわけです。

そこに立ちふさがったのが梅木。


あ、あれ?顔つきが
心なしかイキってるんですけど…。
かをるの夫は俺だ、フフン(本当にフフンって感じがするのよ)とばかりに
なんか惣吉さんへのマウンティングを
表情からひしひしと感じるんですけど…。

そんな上から目線にも動じない
惣吉さんの堂々とした立ち振る舞いに、
なぜか心を乱される梅木。
あ、あれ、なんか黒くなってきたよ?


もうこっからはね、全体的に黒梅木。
惣吉さんが気をきかせるまではほぼ全編黒梅木。
いやむしろ闇梅木。
ダークサイド落ち。ダース梅木。


柴田恭兵さんが熱演してるから
つれぇ…かをる可哀想…梅木お前は何なんだよ!
と梅木さんへの殺意半分、ほんの少しだけの哀れみ半分ってところ。

全部列挙したらきりがないんで
(だってずーーーっと闇梅木なんだもん)
特に印象に残ったところから。




広敷連中と納屋連中の争いをおさめるために
かをるが単身外川に行って惣吉と話をつけてくる!と提案したところから、
既に梅木は闇落ちしてました。


おいおい、こえーよ。
顔がこえーよ。
瞳のハイライトすっかりなくなってるし。
そこまで演技で表現できるのか柴田恭兵!!



惣吉と会って、涙ながらに
もう時計の針は戻せない、今の幸せを壊せない、と謝るかをるが可哀想でさ。
梅木を愛してます、なんて言っちゃってるけど、そのあとあまりの辛さによろめいちゃって涙ぐんじゃって、
あーー嘘なんだなーとこっちは感じるわけよ。

のちにあるるいさんとのシーンで、
今でも惣吉さんのこと好きなんでしょ?との問いに
否定しないんだもん!!
いや、分かってたけど!!
分かってたけど!!
見てればわかるけど!!
るい!今更反省してもおせーぞ!!




多分梅木さんも薄々と感じてるんだろうね、自分へ愛情が向いていないことに。
未だに惣吉さんのことを思っていることに。

どんなに惣吉のことを言葉巧みに
悪く印象付けようとしても、かをるはそれを全く信じない、惣吉の人柄を信じている。
それが梅木さんにとっては自分へのひどい裏切りに思えたんでしょう。惣吉さんへのコンプレックスすごいからね。
はぁ、うぜえ男だな…。


そして、帰ってきたら、
かをるが何処かに保管しておいた
潮来旅行の写真等思い出の品を、
いやみったらしく机の上に
放置しておく黒梅木。ぶふっ(失笑)

俺がこれを見て
傷ついているよと言わんばかりなんですよ。女の腐ったようなやっちゃな。はあ。


そしてその晩、夜遅く酔っ払って
帰って来た梅木。(酒飲むなよバカタレ)
待っていたかをるにネチネチ暴言を浴びせて、
かをるが思わず泣いちゃうの見て、
もう見ちゃいられんかったわこっちは!!


かをるはなあ、今の幸せを守るために!!
惣吉さんへの想いを諦めたんやぞ!オォイ!


すっかり闇落ち状態の梅木さんは
惣吉さんの夢を見ているかをるのことを
寝ずにじっと観察しているわけです。
(まあこれは「惣吉さん」と寝言で口走るかをるにも相当問題があると思うけど……。夢の中で惣吉さんとバレーボールしてるし…)



さらにさらに、広敷連中と
納屋の連中が賭け事した罪で
警察に身柄を拘束されているので
迎えに来たら黒梅木と惣吉さんが遭遇しちゃう。ドラマチック!!これ仕組まれてねえか!?


毎晩夜遅くまで飲み歩いて
女房を泣かせている
黒梅木のことを男のクズだと非難する惣吉に激昂し、殴りかかる闇梅木。


梅木さん、いつぞやの河原畑みたいな表情してるよ!こわいよ!!崖じゃ!崖じゃなくてよかった!!


殴りかかり方が絶妙にへなちょこで
無様でみっともなくて素敵です。


そしてそしてそして、さらに
飲み歩いてとうとうかをるが心配して
迎えに来てくれたときの梅木さん、
これはもう痛々しくもあるんですけど、
あまりにも情けなくて見ているこちらとしては笑ってしまいました。
(笑ってばっかりやないかい)


吉武惣吉にクズって言われた…
と泣き言を言い、
俺なんか俺なんか…と女々しさ全開。

挙げ句の果てにはハマさんとの過去を
かをるへのあてつけでつい言っちゃう始末。
えっ、頭おかしいのかな?


このシーンは、柴田恭兵さんが熱演してるから何となくピリピリとしたいいシーンになったと思うけど、
よく考えてみたらなかなかのお笑いシーン。いや私にとってのね。
なんかもうイライラ通り越して
すごいなこいつ!!!ブフッ!!みたいな。
フォルムが柴田恭兵じゃなきゃぶっ飛ばしてるけどな。



かをると惣吉が共謀して(!?)
全力フォローする形になったから、
なんとか立ち直れましたけど、
おそらく梅木さんは二人のそのフォローにすらも気づかないで自分とかをるの夫婦で
困難乗り越えたった、
みたいな認識なんかなあ。


仮に認識していて、二人に感謝していたとしても、わりとすぐ記憶の彼方に吹き飛んでいって、また自分自分になる人だと思うね。


かつてハマさんの好意を利用して、
不誠実な関係を結んだときに、
前番頭さんとハマさんの心遣いで
穏便に物事がおさまったときのようにね。

はぁ。めんどくせー男ですよ!!



・本当にメンタルが弱いのか?→かをると惣吉のメンタルが鋼すぎるだけなのでは?

これまで散々梅木さんのことを『お豆腐メンタル』『イキるくせにすぐ疑心暗鬼になるアナキンみたいなめんどくせー奴』『柴田恭兵じゃなきゃぶっ飛ばしてる』などと罵詈雑言を重ねてきたが、
よく考えてみたら、
かをると惣吉があまりにも
メンタル強すぎるだけなのではないかと思えてきました。


梅木さんは、幼い頃親に死なれて、
挫折に次ぐ挫折で
他人のことを心の底から信じられないように育ってきた男なのです。
他人の顔色を伺って生きてきたような男なのです。

妾の子とはいえ愛されて育ってきたかをると、吉武家の跡取りとして両親や漁師たちに愛されて育ってきた惣吉とは、育ってきた環境が違うのだ。まずそこを考慮に入れなきゃね。


それだけじゃない。
かをるはメンタル最強不屈のヒロインなんよ。
メンタルの戦闘力は多分530000ぐらいある。


惣吉も同じ。
遭難から生還してきたら
愛妻が他の男と再婚してた、
ついでに愛妻と自分との初めての子は流産で亡くなっていたなんて一気に知らされて
錯乱状態になってもおかしくないのに、至って冷静。


事情を聞きに入兆へと足を運んで、
梅木が謝ったり事態を説明するどころか
惣吉相手にイキってマウンティングしても、余裕の顔なの。
器が違うわあ。


梅木が例によって酒に呑まれ
かをるに暴力&暴言吐いてしまったときも、
かをるはむしろ惣吉を責めるんです
「あなたがいるから幸せになれへんねん」、と。

なんでやねん。なんでやねん案件よこれ。



お前ら誠意ないんかい、
惣吉さんの気持ちを慮るとかせんのかい!



とこの件ばかりはかをる含めオイオイと思った。(というか基本的に入兆側の人たちって漁師側の人たちに失礼だよね。)

しかし、惣吉は納得し
「もうお前を悲しませたりしない」
とかをるのもとから去っていくんよ。

何なら軍からの遠方の仕事の依頼を承諾し、
命をかけた任務に邁進していくんです。

え、神か何か?


自分が遠くにいた方が、
かをるたちも安心して幸せになれるだろうと。


う、器が、器が梅木と違いすぎる!
おちょこと太平洋ぐらい違いすぎる!!



このあと、惣吉が銚子から離れたと見るやメンタル安定してイキイキしだした梅木さんを見て、正直笑ってしまったよ。何回もしつこく言うけど。


梅木さん、立ち直った俺!に酔いしれるなよ、
かをると惣吉が周りの幸せのために
自分の気持ちを押し殺して
お前のメンタルケアしてくれたおかげなんだからな!

また、防空壕でかをると惣吉が再会したときかをるが惣吉に
「他人を犠牲にして得た幸せって本当に幸せなのかわからない。あなたが幸せでないと、私の幸せは本物じゃないような気がする。」
みたいなことを言うんですけど、
(お前が惣吉さんのこと批難したからだろっ)
惣吉さんは顔色も変えずに
「俺は幸せだ。お前が幸せなら、俺も幸せなんだ。それでいいじゃねえか」って言うんです。

え、神か何か?


どんだけ…。こりゃ惣吉さんのメンタルの戦闘力530000ですわ。もしくはそれ以上ですわ。



そんなわけで、かをると惣吉さんのメンタルが異常数値なだけで、
梅木さんのメンタル戦闘力は決して3ではないのだ。3000ぐらいはあると思う、多分。


●かをるは死神ヒロインなのか?

澪つくし』で何人登場人物が亡くなったのかカウントしてみる

ーーーー外川編ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
惣吉の父(凍死?窒息死?)
千代さん(肺結核)
鯉沼(溺死)
水橋(溺死)
河原畑(溺死)
磯部(船から海に投げ出されたことによる溺死)
(その他遭難によって死体もあがらなかった犠牲者も確認)

ーーーーーかをる、入兆に戻るーーーーーーーーーーー
竹田(戦死)
紀之(戦死)
今西(衰弱死?空襲による焼死?)
みね(ナレ死)
久兵衛(内蔵破裂により出血多量?)
るい(空襲直撃によりほぼ即死)
ぎん(肺炎をこじらせ死亡)
律子(肺結核)
梅木(戦死)


※抜け出る人は随時追加



これを見るとわかると思いますけど、
かをるが行く先々で死者が出ているんですよね。

死神、とまで言うのはいささか気の毒だけど、
かをるには何かしら人の寿命を吸い取ってしまう呪いがあるのではないでしょうか?

もちろん、この仮説を論破することはできます。
かをるが入兆に戻ったのは
満州事変が勃発した年で、
ちょうど日本が長い長い戦争を始めるときだったし、戦争中はそれだけ死者も多い。
しかも、海沿いの外川と比べて、
入兆は銚子市のど真ん中にあった可能性は極めて高い。
よって、空襲に遭う可能性も外川よりも高くなるというわけ。


それにしたって、さあ。
こんな露骨にかをるの行く先々で死人が出ると、
オカルト好きの自分としては、
かをるちゃんには申し訳ないが、
恐怖の死神ヒロイン、
と揶揄したくなるわけで。


人の寿命吸い取ってんな!
みたいに言いたくなるわけで。



かをるの死神力に太刀打ちできるのは、脅威の生存能力を持っている神からのご加護をもつ惣吉だけ。
そういった意味でも、
まさに運命の二人だったと思わざるを得ないですね。











ジェームス三木がここまで
主要人物のほとんどをぶち殺した意図を探ってるんですが、やっぱり戦争の無常さを際立たせるためかなあと思います。

かをるは、自分の手元にある
入兆の幸せを優先して
惣吉さんにあえて冷徹な対応をして
自分の気持ちを押し殺すという決断を取りました。
我を通してしまったら、両親も、梅木も、子どもたちも傷つけてしまうから。
そして陸者と海者の対立もさらに激化してしまうだろうとも推測できた。
今までどおりを続けて、惣吉への思いを断ち切ることこそが正解だと判断した。

とても現実的でドライな、でも的確な判断だと思います。
惣吉さんもそんなかをるの気持ちを理解して、
自らかをるのもとを離れていきました。


だけど、二人がそこまでして守ろうとした
入兆の幸せは、戦争によって無残に壊されてしまうんですね。
父の久兵衛も、母のるいも、姉の律子も、夫の梅木も
戦争によって殺され、工場も焼かれてしまう。
その無常さのコントラストが、
なんか、すごく良かったと思います。
(最終週に4人ぶっ殺すのはさすがにやめてほしかったけど)

ロミオとジュリエットとは違って、
澪つくし』ではかをると惣吉は生き残るんですよね。
一見、二人を縛り付けるものは
もう無いように思えます。
陸者と海者は和解しているし、
二人を隔てるものはもう何もない。

でも、両親や姉や梅木の死と、
死者たちからの無念のメッセージを受け取ったかをるには、
惣吉さんとの純愛よりも優先しなければならない使命が生まれてしまった。
父が守ろうとした入兆の伝統を引き継ぎ再建させる、昭彦と和彦を立派に大人に育てるという使命。

惣吉さんから再び求婚されたとき、
受け入れたらどうしようかと思ってましたが、
自分にはやるべきことがある、と断ったかをるには内心拍手喝采でした。
そうだよね、かをるならそう言うよね、って思いました。

そして、それでも絶対に諦めない惣吉と、
いつか、英一郎の「世界に醤油の素晴らしさを届ける」という夢が叶えられたとき、再び惣吉と、というひそかな願いを持つかをるの描写もすごく良かった。

澪つくしっていうのは、船の航路を示すもの。

かをると惣吉の人生の航路を示す澪つくしは、
いつか二人が再び結ばれる瞬間のことを指すんだろうなーと思って、
劇中で恋のあらすじBGMに二人の思い出が走馬灯のように回想シーンで流れているのを見たとき、
なんだかジーンとしてしまったんだよな。
完全なハッピーエンドではないけど、
決してバッドエンドでもない。

こういう終わり方も
いいもんだよなと思いました。